花粉症へ備えと対策を、はり・きゅうで

花粉猫

 花が顔を出し始め、新生活・新年度へ期待も高まるこの時期。
それでも、人によってはブルーな時期でもございましょう。
そう、『アイツ』の時期です。

 花粉症。

 鼻や目の症状が代表的ですが、二次的に集中力が落ちたり、服用する薬によっては眠気を誘うといったお悩みを生ずるものでございます。

 そこで、『お薬が不要な対策法』としてのはり・きゅうから観た花粉症や対策法などをご紹介いたします。
お付き合いいただけますと嬉しいです。

早水の梅

東洋医学から観る花粉症

 花粉症をはり・きゅう・漢方の視点から観てみますと、いちばん大きなキーワードは

『春』

です。
 まぁ、当たり前すぎて拍子抜けですが、
もうすこし詳しいトピックにつなげていきますと・・・

1、冬のカゼが、春に遅れて悪さをする
2、春の『上り調子』についていけない

という2つの問題点を挙げることができます。

東洋医学は花粉症の予防ができる?

 それでは以上の、
1、冬のカゼが、春に遅れて悪さをする
2、春の『上り調子』についていけない
という問題を、原因と予防のお話しとして掘り下げてみます。

 この2つの問題に取り組んで、花粉症の予防と軽減に役立てよう、という発想です。

冬のカゼが時間差で悪さをする

 『時間差』という現象を言い換えると、
「冬にカゼをひいて、潜伏することがある」と言えます。
一般常識に照らし合わせてみますと、「そんなことある?」と思われることでしょう。
 ところが、【東洋医学のバイブル的書物】である、
『素問』や『霊枢』といった古典書物には「あるよ!」と書いてあります。

では、潜伏したカゼはどうなるか?
3つに分けられます。
1、春になって悪さをする←今ココ
2、夏になって悪さをする
3、意外な不調の原因になる
この3つの変化についてお話ししましょう。

潜伏したカゼが、春になって悪さをする

 潜伏したカゼは表面からは見えずに、寒いあいだはおとなしくしています。
「単独で悪さをするほどの熱量がない」からです。
ですから、総合カゼ薬などで中途半端にカゼを抑え込むのは、
悪手とまでは言わずともおススメはできないことになります。

 そうして、春になって陽気が高まってくるのにシンクロして、潜伏していたカゼが表面化してきます。
 これを「温かくなったタイミングでぶり返す」ので、『温病』(うんびょう)と呼びます。

潜伏したカゼが、夏になって悪さをする

 似たような仕組みで夏に発病するものを、「暑病」(しょびょう)と呼びます。
夏バテや、一部の夏カゼはこの「暑病」がかかわっていると見られます。

予想外のトラブルを引き起こす

 3つめのこの現象ですが、「カラダの深いエリアにカゼが潜伏したとき」に多い現象です。
これを専門用語では『熱入血室』と呼びます。

 「血が流れる、深いエリアまで、熱が潜伏する」というニュアンスです。
五臓六腑の理論で言いかえると、『肝臓』(※西洋医学でのLiverとは似て非なるもの)との関係が深く、東洋医学では『血のタンク』の役割があります。

 ですから、
血に関わるトラブル
肝の臓に関わるトラブル
が起こる可能性があります。

 さらに、これは女性限定で『血』との関係が深い臓器として『子宮』が挙げられます。ちなみに東洋医学では『女子胞』という名前で呼ばれます。
 加えて、この『女子胞』の働きとして、
「血を集めては、月に一回リリースする」
「妊娠時には、血をたくわえて赤ちゃんが(10か月)定住できるベッドをととのえる」
という特徴があります。

 したがって、カゼの後に
・頭痛
・肩こり
・微熱
などがあらわれて、
しかも女性のケースではこれらの症状が
・生理周期とシンクロする
・月経や妊娠にまつわるトラブルを引き起こす
といった場合は、「熱入血室」を警戒したほうがよいでしょう。
 この現象は、いずれ『レディースケア鍼灸』や『マタニティケア鍼灸』などのトピックであらためてご紹介したいと思います。

春の『上り調子』について行けない

 ハナシを「花粉症発症のメカニズム」に戻します。
『温病』に続く、ふたつめの発症メカニズムなのですが、この現象のキーワードは『春と肝臓』です(これは西洋医学のLiverとは・・・以下略)

 これは『四季と五臓』と言い換えることもできます。
もうすこし詳しく申し上げます。

 四季では、それぞれにメインで活躍する『臓』がかわるがわる、交代でリーダーをつとめます。
春:肝
夏:心
秋:肺
冬:腎
(これは西洋医学のLiverやHeartとは・・・以下略)
 何度もこのくだりで恐縮ですが、これは『似て非なるモノ』を混同しないように学生さんなどに口を酸っぱくして注意する点なので、ご容赦ください(´・ω・`)

 閑話休題。

 人体と一年のサイクルがシンクロしている様子をあらわす、東洋医学の自然観・身体観となっています。
 四季と臓腑のシンクロを簡単に観てから、『春と肝のシンクロ不足』から来る不調について観てみましょう。

①【春↔肝の臓↔芽が出る時期】


 木に新芽が出てきて、虫や動物が冬眠から起き出してくる春。
人体も新たなスタートを切るわけですが、トップギアにいきなり『あがる』わけではなく、徐々にペースや出力を上げるのが理想とされています。
そのときによく働くのが『肝』(かん)だとされています。
 『肝は発散をつかさどる』と言われていまして、冬の「省エネモード」からカラダを起動させるために、肝の『発散力』を必要としています。

②【夏↔心の臓↔勢いよく伸びる時期】

 樹木やイネが1日ごとに目に見えて伸びるほど、物事が活発な時期。
人体もおなじくらい活動的な時期なので、スポーツの合宿や大会、野外音楽フェスなどなどエネルギーをよく使う活動と相性が良い時期です。
 オーバーワークや暑さでダウンしないようにしながらも、常に働き続ける『心』(しん)の臓のはたらきが、夏とシンクロしています。

③【秋↔肺の臓↔守りをかためていく時期】

 野菜や果物が豊富で、新米の時期であります。
収穫祭や秋祭りが各地で行われて、春から夏にかけて『発芽して成長したものが実を結ぶ時期』であることが実感されます。
 と、同時に樹木は枯れ葉を落とし、冬眠を控えた動物は冬を越すための栄養をたくわえる時期です。
 『秋のうちに冬じたくをする大事さ』というのは、豪雪地帯の方ではよりいっそう強く実感されるのではないでしょうか。
 秋の人体では、『余分な水分を体表から汗として出しながら、肌をきめ細かい“冬仕様”に仕上げていく』というアクティビティが推奨されます。
 この目的で『スポーツの秋』と、『活発な呼吸』とかかわりが深い『肺』(はい)の臓とシンクロしています。

④【冬↔腎の臓↔省エネの時期】

 自然も人体もすべて活動が内向的になる冬は、腎(じん)の臓とシンクロしています。
 イメージとしては、『重りやアンカーのように、下腹部で抑えを利かせている』といいますか、慣用句でいいますと『腹が据わった』状態がよいとされています。
 そうして、省エネモードをキープしながら『汗をかいて、寒さが付け入るスキをつくる』ということが無いように。
というのが、冬の過ごし方でイチバンのコツということになります。
 これができると、花粉症の芽をかなりの割合でカットできますので、ぜひ『冬のうちからできる花粉症予防』としておススメしたいところです。

東洋医学的な予防法、2選

 以上を踏まえまして、東洋医学から観た『花粉症予防』を2つ挙げます。
1,冬の養生法
  冬にカゼをひかないのがベスト。
  カゼをひいたら、『早期に』『キレイに』『残さず』手当てする。
  冬を越えて持ち越したカゼは、はりきゅうなどでケアを。
2,春の養生法
  春の体力の立ち上がりを調整する。
  夏ごろに調子のピークを持って行くつもりで、
  徐々に仕事やトレーニングなどの強さや量を調整できると、さらにGood。
  さらには、五味の活用や食養生も有効。

1,冬の養生法

 まずは、冬の養生法ですが、特別な健康法というよりかは、大正・昭和世代が気を付けていたことをそのままできれば、だいたいは良いかと思われます。
 冬は生ものを避け、温かい飲食物を意識して摂り、発汗するようなアクティビティはできれば避けて、発汗したらすみやかに着替えるなど、、、こうしたちょっとしたひと手間で、カゼはひきにくくなるとおもわれます。
 またちょっと珍しいワンポイントアドバイスとしては、
「カレーは春夏までおあずけ」
ですね。
辛味そのものは良い面もあるのですが、日本の冬との相性からはおススメはしません。

 とはいえ、いくら気を付けていてもカゼをひくことだってありますよね。
この時の初動の対策としてイチバンおススメなのは
「しっかりと休むこと。できれば、胃腸も休ませるとさらに効果的」ですね。
 逆に、ダラダラといつまでもカゼを引きずるのは、
「総合カゼ薬を飲みながら、だましだまし動く」。
なかなか休みにくい現代の日本人にはあるあるな現象でしょうが、
「数日しっかり休んで、跡かたなく回復させる」のと、
「治ったか治ってないかよくわからない状態で長期間過ごす」
ことを比較するとみなまで言うな。というお声をいただきそうですが(;^_^A・・・

2,春の養生法

 春の養生法としては、
「エンジンを始動したばかりなので、正常な人でもフルパワーで動かない」という事情があります。
 そこへ、春と関係が深い『肝』の臓のはたらきが少し弱い体質の方などの場合は、なお一層
「(カラダの)エンジンがかかりにくい」
「(カラダの)ギアが上がらない」
といった状態に入っています。

 その対策としては、
・省エネ
・五味の活用
などが挙げられます。

 省エネの例としては、
・『肝』とかかわりが深い、『眼』を使う機会/時間を減らす
・とくに、夜間は眼を休ませる
・運動時間は短めに
などのやり方があります。
 五味の活用としては、
・春に特有の『のぼせ感』を『酸味』でおさめながら、疲労回復の助けとする。
などの使い方があります。

花粉症のはりきゅう

 それでは、はりきゅうでの手当の手順を三段階でお示しします。

まずは、体質別の調整

 「鼻や眼に効果的なツボに、ハリをしたい」
人情としてはとても自然な発想です。
ですが、これはのちのお話しになります。

 まずは第一段階として、『おひとりおひとりの体質にあわせた調整法』を目的としたハリが必要です。
 これは
『ピラミッドの底辺』
をととのえるプロセスになります。
 『基礎の基礎』
です。
 「急がば回れ」です。

 具体的には、手足へのはり・きゅうになります。
特に、「肘から先、膝から下」にあるツボを中心に施術することで、体質別の調整ができます。
 専門的には、この段階を『本治法』と呼びます。

つぎに、肝の臓の調整

 第二段階として、
『肝の調整』をおこないます。前述した、季節(春)との関わりのほかにも、血、筋肉、眼などの疲れ具合からツボを選びます。

 このようにして、『肝』の臓とかかわりが深いツボをターゲットにはり・きゅうをおこないます。
 手足・背中などに施術をおこないます。専門的にはこの段階を『本治法補助』と呼びます。
目安の時間としては、ここまでで30~40分くらいです。

仕上げとして症状別に

 三段階目に、症状別の手当てとなります。
この段階でもはり・きゅうを用いるとともに、
貼り付ける『シール状の鍼』や
『ご自宅でのせんねん灸』や
『ツボ押し』などの
応急処置として活用できる方法もあります。
 専門的には、この段階を『標治法』と呼びます。

ツボの補足説明

 ツボは、全身に360か所ほど分布しています。
ツボ単体にもそれぞれのはたらきがあるので、『ツボ押し』などでも「それなり」に効果はあります。

 ツボの性質のひとつとして「“ネットワーク”をつくる」という特徴があります。
 このネットワークには規則性がありまして、人体では通常12本のルートのどれかに、ツボが接続しています。
 この様子を図にしますと、人のカラダに「“駅”と“路線”からなる“路線図”」があるような状態であります。

 そうして、これらの『路線』を専門的には『経絡』と呼び、
『駅』(ツボ)を『経穴』と呼びます。

 そうして、これらの『経絡』は
手/足の末端のツボからはじまって(始発駅)、
いづれかの臓腑につながります(終着駅)。

 この様子を専門的なルールで呼びますと、
①手/足の端から伸びてるルート:『手の〇〇△△経』
②位置などを示す情報:『太陰』から『太陽』までの6種類(上の〇〇に当てはめる)
③つながる臓腑の名前:『肺』(上の△△に当てはめる)

この3つのルールで12本の『路線』に名前を呼び分けています。
例)『手』から伸びていて、『太陰』に分類されて、『肺』につながる。
   ↓
 手の太陰肺経

 こうしたルールがあるので、『カゼ』とか『皮膚トラブル』などと鍼灸師が聴いた時には、
 「それならば、肺との関係を考えて、『肺経』をチェックしよう」などと考えるのです。

 さて、こと花粉症に関して非常によく用いるルートは2つです。
ただし、これは先ほどから申し上げている『第3段階』(本治法)に限定したおはなしですので、
「この2つの経絡だけで花粉症が治る」
というのは話の筋としてはイージーすぎるのでご了承ください。

 よくつかうルート(経絡)は二つ。
・手の陽明大腸経
・足の陽明胃経
以下に、この二つのルートと、症状との関係を観てまいります。

鼻には
手の陽明大腸経
足の陽明胃経
の2本のルート(経絡)が有効です。
 そのふたつの走行ルートから、鼻との関係を観てみます。
(以下は、ルートは略称します)

 大腸経は、手の人差し指の爪のカドから出発します。(爪のカドの親指がわです)
 そこから、

親指と人差し指

手首後面の人差し指がわ

肘のシワの端っこ(親指がわ)

肩の前面の外がわ

肩の上

(逆側の)下あごのカド

鼻の脇の溝(ほうれい線の内の端っこ)

というルートをとりますので、
左の鼻がグツつくようなときには、右の腕のツボを押さえるといった使い方ができます。
 また、この走行ルートを花粉症のほかに応用すると、
腱鞘炎(とくに親指側)、テニス肘、肩痛(とくに前面)、肩こり、歯肉炎や歯の痛み(とくに下あご)
といった応用もあります。

 胃経は、眼の真下から始まって、そこから

まっすぐ下へくだって

途中、上あごを経由して

(その後、カラダの正面のやや外寄りを下行)

首の正面のやや外寄り
(以降はほぼ、真っすぐ下る)

鎖骨

胸部

腹部

 鼠径部

太もも

すね

足の甲

足の2番目の指の爪の内カド

 というルートになっています。
このルートを花粉症に使うなあらば、
『鼻炎』なんだけど、『上あご』にも響くようなケースではおススメできます。
 その他、花粉症以外の応用をルートから割り出すと、
肩の上から前に走るようなコリ感、乳腺炎、あばらのあたりに響く腹痛、鼠径部痛(特に前面)、ひざ痛、脛のひきつり、足の甲の痛み

といった使い方ができます。


前述で、『眼』をめぐっている『足の陽明胃経』がおススメできます。
 くわえて、眉毛のあたりに分布している
『足の太陽膀胱経』がおススメできます。
(略称)膀胱経は、眉の内カドから始まって、真っすぐ登って、さらには頭をめぐっては首→背中→腰→脚の後面
と下っていきます。
 したがって、『眼がかゆくて、しかものぼせたような感触もある』
という時には、
『余分な熱を、膀胱経に沿って引き下げるイメージで』
首や背中、脚の後面のツボを使う。
といった使い方がおススメです。

 特に、頭の中でも、鼻と関係が深い『おでこの痛み』や『頭の重さ』などに使われる機会が多いです。

 鼻炎の時には、通常の『鼻の穴』(鼻腔)の奥にある、『サブスペース』(副鼻腔)にも炎症が及ぶことがあります。

 この副鼻腔は4種類あるうちの1つがおでこにあるので、鼻炎の状態によっては『おでこの症状』が出ます。

 ツボの使い方としては、
これまで触れてきた3つのルート(大腸経、胃経、膀胱経)を同時に使うことで、直接・間接的に効果が期待できます。

まとめ

 以上、急ぎ足で花粉症と、東洋医学/はり・きゅうについて観てまいりました。
 この記事で、いま一度振り返りたいのは、
・季節と生活をマッチングさせる養生法のコツ
・ツボを使うにあたって『ネットワーク』を応用するコツ

この二点を意識していただけますと幸いです。
ここまで、みまた駅前鍼灸院から下村がお送りしました。
ご覧いただき、ありがとうございました。